真紅の世界
昨日、ちゃんと私は部屋で寝ていたはずだ。
部活張り切りすぎて疲れたから、お風呂に入ってすぐにパジャマに着替えて。
うん、絶対に布団で寝た。
部屋の電気を消した記憶も、お気に入りのクマの抱き枕を抱きしめた記憶もちゃんとある。
……だから、絶対に起きて一番に目に入るのは、見慣れた天井のはず。
……それなのに、今目の前に広がるのは、何故か青空。
もしかして私寝坊した?
だからそんな私を、ウメさんが外に投げ出した?
……なんてことはありえない。
なんて言ったって、ウメさんは今年で齢70だ。最近じゃ腰が痛いと、重いものを持つことを敬遠しているくらいだから、私を持ち上げる力もないはずだ。
じゃあ、やかましいチビたちが力を合わせて?
それとも最近生意気になってきた中学生たちが?
そんなありえないことを考えてみるけど、どう見たってこの景色は見たことのない風景だった。
見慣れた庭じゃない。
だって私が寝ているのは一面の草。
家の周りを取り囲むブロック塀も、大量に干された洗濯物も、影すら見当たらない。
ただひたすらに、芝生みたいな草が、綺麗に遠くの方まで生い茂っている。
芝生って手入れしないとボウボウに伸びるのに、均一の高さで綺麗に刈り揃えられている。
ここまで綺麗に手入れされているってことは、誰かの土地なんだろうか。