真紅の世界
異世界での生き方
その人は軍服のような姿でも、甲冑姿でもなかった。
上から被って着るような、床に擦れるほど長いワンピースみたいな服を着ている。
真っ黒なその服は、襟元と袖と裾に少しの装飾があるだけで、ほかに飾り気はない。
これでとんがり帽子をかぶっていたら、完璧魔女の格好だ。
でも、残念ながら帽子は被ってない上に、男だった。
おでこ全開で後ろに撫でつけられた銀色の髪は、肩より少し上くらいでパッツンと切り揃えられている。
なにより目を引いたのは、額の真ん中にある緑の宝石。
まるで生まれたときから付いていたかのように、おでこに埋め込まれていた。
「早くその変な服を脱げ」
あなたは誰なのか聞く前に先手を打たれた。
あなたのその服も変ですよ、と言いたい。
でも、確かにこのパジャマはこの世界じゃ変だろうから、何も言えない。
……レティは気に入ってくれてたのに。
「着替えがありません」
「知るか」
「……裸でいろと?」
「見せられるこちらが迷惑だ」
ああいえばこう言う。
しかも、表情を一切変えないでロボットのように淡々としゃべるから、余計にムカつく。