真紅の世界
「……とにかく着替えがないならこのままでいます」
「ならば早く来い」
お前が脱げって言ったんだろうが、という前に目の前の男はさっさと扉の向こうに消えていく。
来いというんだから着いていかなくちゃいけないんだろうけど、状況を理解できないし足の長さは違うし、もう散々だ。
「ねぇ! あなた名前は?」
「ない」
「ないわけないでしょ! って言うかどこに行くの?」
すたすた歩く銀髪の男の後を、小走りでついていく。
でも問いには答えてくれずに、ただ黙々と歩みを進めるだけだ。
本当に機械みたい。
レティとシンクは優しいのに、お兄さんとこの銀髪男は理解できないし怖い。
そのあといくら聞いても名前はないの一点張りだし、他の質問には答えてくれもせずに完全スルーだった。
「ないならレティとかはあなたのことをなんて呼んでるの?」
「レティ様はウルという名前を付けてくださった」
「レティのお兄さんは?」
「アレン様は12とお呼びになる」
事務的な回答に、眉をしかめた。
レティの呼び方は分かるけど、レティのお兄さん、アレンの呼び方が分からない。
なにが12?