真紅の世界
「お持ち致しました。 こちらでよろしかったでしょうか?」
さして時間を置かずに、むしろすぐそこに用意してあったんじゃないかと思うくらいに早く戻ってきたさっきの侍女。質素な茶のワンピースに身を包んだその女の人は、レティが着ているようなヒラヒラとレースで装飾されたドレスではない、襟元がよれた白い長袖の麻のシャツと、カーキ色のだぼっとしたズボンを持ってきてくれた。
男性用らしくてウエストがとても緩い。とりあえず、紐を借りてベルト代わりにしてしばってそれに着替える。
なんだか昔のアニメ映画に出てくる男の子の服みたいだ。
いつも手首に付けていた髪ゴムは、見慣れたそれよりボロボロになっていた。でも、幸いにも切れていなくて、それを使って髪を上で一つに結んでポニーテールにする。
「なんだか、サラってば男装の麗人だわ」
キラキラとした瞳でうっとり呟くレティに苦笑いを返して、私はレティと一緒に部屋を出た。
レティと話しながら廊下を歩いているときに、シンクはいないかなと目だけで探してみたけれど、それらしき姿を見つけることはできない。
相変わらず、レティは可愛くて素直ないい子だ。
でも、アレンの妹だと、そう思うだけで昨日のように無条件に好きだと思えなくなってしまった。だからこそ、シンクにそばにいてほしかった。
「今日の朝食はね、私の大好きなものばかりなのよ」
てっきり、映画のように大きなテーブルで、顔も見えないくらいに離れて食べるのかと思ったら、普通のダイニングテーブルの大きさのテーブルに次々と料理が運ばれてくる。