真紅の世界


赤いスープにサラダ、見たことのない魚を焼いたものにパン、それから果物のようなもの。

見た限りでは、あまりこっちの世界も食べ物や食べ方に違いはないみたいだ。



手を合わせていただきますと言えば、レティはそれに興味を持った。


「どうして手を合わせて、“イタダキマス”って言うの?」

「この場にある料理の材料は、みんな命があったでしょう? その命を貰って私たちは生きてる。だから私の世界では、その命に感謝を込めて“いただきます”って言うの」


これはウメさんが小さいころから教えてくれたこと。

小さいころはそれが面倒で仕方なかったけれど、その意味を理解できるようになってからはただ言うだけじゃなくて、本当に感謝を込めてその言葉を言うようにしている。


「素敵ね!私も今日から言うことにするわ!」


またキラキラと瞳を輝かせたレティは、言うなり手を合わせて「いただきます」と可愛らしい声で言って食事を始めた。

マナーも何も知らない私は、いつものように食事をしながらレティの食べ方をこっそり観察してみる。

ナイフとフォークも一本だけで、テーブルマナーはないと思ったのに、レティの食べ方は普通に食べているようでとても洗練されていた。

一つ一つの動作が流れるように美しい。
思わず見とれていると、レティがふいに私の方を見て微笑む。


「サラ、この世界の文字は分かる?」


てっきり食事の味を聞かれると思ったのに、意外な質問にすぐに答えることが出来なくて、慌てて口の中のものを飲み込む。

言葉は普通にしゃべっていて通じるから、もしかして文字も普通に読めちゃったりするんだろうか。

淡い期待を抱いていたのに、レティに「これ詩集なんだけど」と差し出された本を見た瞬間、その期待は見事に砕け散った。

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