真紅の世界


題名からして読めない。

なにこのミミズみたいな文字。
英語の筆記体に似ているけれど、違う。


「……読めない」

「じゃあ私が教えてあげるわね」


魔法の勉強だけじゃなくて、文字まで勉強しなくちゃいけないことになるなんて。一気にやる気が損なわれた。


「これで“サラ”って読むのよ」


楽しそうに紙にペンを走らせてレティが見せてくれたのは、やっぱり馴染みのないミミズみたいな字。

でも自分の名前は書けるようにならないと、とレティに渡された紙に見よう見まねで書いてみる。

レティが書いてくれた字と同じに書けたは書けたけれど、これで“サラ”だなんて読めないしどこからどこまでが“サ”で“ラ”なのか区別もつかない。


「サラ上手! 次はね、私の名前! これで“レティ・ブライス”って読むの」


再び見せられた文字は、やっぱり分からないけれど“サラ”と違うっていうのはなんとなく分かる。

とりあえず自分の“サラ”だけでも読み書きできるようになっておこうと、それだけは覚えることにした。

< 47 / 122 >

この作品をシェア

pagetop