真紅の世界
「剣の稽古って、女の私でもできる?」
なんでも聞いて、と言われたから、素直に一番自分の興味のあることを聞いてみる。部活で毎日竹刀を持っていたから、それと同じことをしていたかった。
ここにいることが非現実すぎて。元の世界のことをしていれば、すこしだけましな気がしたから。
なのに、レティは信じられないものを見るような目で私を見た。
「サラ、女の子は魔法は使えても剣術は使わないわ。 剣術は男の嗜むものよ」
「うん、きっとそうなんだろうと思うけど。私の世界の、私の住む国では、剣術は女の子でもできたのよ」
私の言葉にレティは驚い、て「そうなの?」と大きな瞳でパチパチと瞬きをする。
「そうなの。毎日練習するのが日課だったから、朝の早い時間にでもできれば練習したいんだけど。……ダメかな?」
竹刀がこの世界にないことは容易に予想がつく。この際我儘なんて言わない、木の棒でもなんでもいい。
ひと時でも無心になってこの世界を忘れて、元の世界のものにすがりたかった。
私がいたあの世界が、確かにあったんだって。
「大丈夫だと思うわ。私もサラが剣を持つ姿見たいものっ」
小さな両手を胸の前で合わせて、はしゃぎながら無邪気に笑うレティに、思わず微笑む。
「いいよ、でも朝早いから起きられるかな?」なんてからかってみたけれど、「お寝坊したサラに言われたくないわ」と返されて苦笑いを浮かべるしかなかった。