真紅の世界
「キュイ?」
その語尾を上げるような鳴き声に、私の言葉を疑っているのような気がして私はシンクにぐっと近づく。至近距離で綺麗な真っ赤な瞳と見つめ合いながら、「嘘じゃないよ」とシンクに伝えた。
「私、親に捨てられたって言ったじゃない? 私が預けられた施設は結構田舎にあったの。田舎って変に団結力とかあるから、施設育ちの私たちは結構いじめにあってたんだよ」
「キュイ」
突然の私の過去の話にもシンク相槌をしてくれる。
とても気の利いたやつだ。
「だからね、私の見た目そんなに悪くないはずなんだけど好きになってくれる人いなかったの。私も、自分と家族をいじめる人たちに恋愛感情なんて持てなかったから。シンクが本当に初めてのキスの相手なんだよ」
へへ、となんだか恥ずかしくなって誤魔化すように笑えば、シンクが目をつむってただの真っ黒の塊になった。
笑ってくれてるんだと私は勝手に解釈しているけれど、実際はどうなんだろう。
でも、笑ってくれてるんだよね、シンクは。
「シンクは優しいね」
両手の中のシンクを再び胸にぎゅうっと抱きしめる。
今度は本気で嫌がっているような「キュイキュイー!」という鳴き声がして、私は名残惜しみながらも両手を広げてシンクを解放した。