真紅の世界
「離せ」
「いやよ、離したらアレンのところへ連れて行くんでしょう?」
「当たり前だ」
「だったらなおさら離さない。 シンクは私が守るの」
ウルは、バカにしたような笑みを浮かべて「守る?」と確認するようにゆっくりと私に問いかけた。
「さっき死にそうな顔をして助けを求めたその口で、そんなことを言うのか?」
「それでも私はシンクだけは守る! 守りたいの!」
怖くて逃げ出したい気持ちを奮い立たせて、そうウルに言い放つ。
でもその言葉の後に、腕の中でもがいていたシンクが抜け出して、さっきと同じように私の前に飛び出してきた。
さっきと違うのは、シンクが私と真正面から向き合っていること。
真紅の瞳がキラキラと輝いていて、それが私を安心させるようにひとつ瞬きをした瞬間、シンクを中心に真っ赤な光が放たれた。
至近距離で放たれた光は不思議と眩しくなくて、目の前のシンクがどんどんと形を変えていくのが分かる。
真紅の瞳は無くなって真っ黒な靄の塊になったと思ったら、それが徐々に大きくなってだんだんと縦に長く伸びていく。
それはまるで人の形になっていくようだった。