真紅の世界
言葉をつまらせるウルを一瞥して、そこからユリウスは視線をあっさり外してしまった。そしてくるりと振り返って、私を見つめふわりと微笑む。
「サラ、俺がお前を助け出してやる」
その言葉にの意味を問いただすより先に、体中が歓喜に震える。
どんな感情よりも先に、ここから逃げ出せると分かっただけで嬉しいという感情が先立った。
可愛くて私に優しくしてくれるレティのいる国なのに。
レティのことを考えるより先に、嬉しいと思ってしまった。
そんな自分のことしか考えられなかった自分への苛立ちが次に襲ってきたけれど、それでも私のこの状況を考えたら仕方がないと、自分で無理やり納得させる。
私は聖人君子でもない、ただの女子高生だ。
普通の人よりは厳しい日々だったかもしれないけれど、この世界での生活よりは楽で楽しい自由な生活を送っていたただの女子高生。
唯一自分のすべてを話せたシンクだったユリウスに、ここから助け出してくれると言って貰えて、嬉しくならない方がおかしい。
いくらレティと過ごす時間が楽しいものだったとしても、それ以外のこの地下室で過ごす時間は苦痛以外の何物でもなかったのだから。