真紅の世界
「サラ、俺がここから助け出してやる。 私と一緒に来い」
その甘美な誘惑に、私はとうとう陥落した。
考えるまでもなく、私の中で答えは出ていたのかもしれない。
「……ユリウスと、一緒に行きたい」
そう言った瞬間、満面の笑みを浮かべたユリウスに力強く抱きしめられる。
心臓が今までにないくらいにバクバクし始めたと同時に、私たち二人を真っ赤な光が包みこんだ。
真っ赤な光の向こうで、ウルが何か魔法で攻撃して来たり、ウルに従うように他の人も魔法で攻撃したり剣で切りかかって来たりしていたけれど、光の中までそれが届くことはなく私はユリウスの腕の中にいながらその様子を見つめていた。
ウルだって、こんな環境にいなければきっと感情もあって、自由に生きていたはずなんだ。
私はウルに傷つけられていたけれど、ウルが悪いんじゃない。
ウルやみんなをこんな風にしてしまったこの国の環境が悪いんだ。
そう頭では分かっているのに、それでもウルを心から許せる気持ちになれなくて。ウルを説得する気にも、レティに打ち明ける気にもなれない私は結局は偽善者なんだろう。
そんな光景を見ていられなくなった私は、目の前のユリウスの胸に顔を埋めた。
この場所から逃げることを選んでしまった少しの後ろめたさから目を逸らすように。