真紅の世界



そしてさっき何気なくユリウスが言ってくれた“幸せが来るようにしてやる”と言う言葉に、今更ながらに感動した。




『幸せが来るって意味なんだよ』






それは初めてあのお城でシンクに会った日に、私が言った言葉。
何気ない言葉をユリウスはずっと覚えていてくれた。忘れないでいてくれた。



そしてさっきの言葉は、私の名前の由来になぞっての台詞だったんだ。




そのことに気付いた途端、私は笑いながらボロボロ涙を流した。




突然泣き出した私に狼狽えるでもなく、優しく抱きしめて背中を撫でてくれるユリウスはとっても紳士だった。きっととっても女性経験が豊富に違いない。
こんなにスマートに対応できてしまうんだから。

そんなユリウスに、仮の姿の時とはいえキスをしてしまった私ってどう思われているんだろう。



考えれば考えるほど、到底いいイメージを持たれているとは思えない。でも、あっちの世界から連れ出してくれるほどには気に入られているんだと、無理矢理ポジティブに考えてみる。

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