真紅の世界
「さて、あまり泣いてばかりだと、サラのその大きな瞳が涙と一緒に零れ落ちてしまわないか心配になる。だからそろそろ泣き止んで、俺の家に行こう」
サラッとクサいセリフを口にしながら、私の背に手を添えて歩き出すユリウス。
その歩調はゆっくりで、足の長いユリウスには窮屈そうな歩幅も、きっと足の短い私に合わせてくれているからだ。
さっきの台詞だって同級生が言ったら「何言ってんの?」と正直ひいてしまうけれど、なぜだかユリウスなら許せる。
やっぱりこれがイケメンパワーなんだろうか。
イケメンなら何をやっても許される、そういう定義は万国共通なんだろうか。
っていうか、ユリウスの家ってどんなんだろう。
洋服も真っ黒だから外観も真っ黒だったりするんだろうか。
でも暗くちゃ気分が落ち込むって言ってたし、ここから遠くに見える町並みは西洋風の白い外観のものが多いから、それに似たような家なのかもしれない。
そんなことをユリウスの隣で歩きながら考えていた私は、「着いたぞ」とユリウスに案内された“家”に着くなり思わずユリウスに突っこんでしまった。
「家!? これが家!? どこからどう見てもこれってお城でしょうが!!」