真紅の世界
私の人差し指の先には、空に伸びる3本の塔。
もちろんそれは全部繋がっている。
まるで、某夢の国のシンボルのお城のような外観なのに、大きさはそれと比べ物にならないくらい大きい。
っていうかこのお城、レティたちのお城より大きいんじゃないの?
なんとなく嫌な予感はしてたんだ。
遠くに見えた街並みの中に足を踏み入れても、迷うことなくそこを通り過ぎて。そのうち普通の街並みだったはずが、周りに民家みたいな建物はなくなっていたし。いつの間にかよじ登れそうもないくらい高い塀が、両脇にどこまでも続いている道に入った時は、挙動不審にきょろきょろしてしまった。その閉鎖された道――といっても車二台が余裕ですれ違える広さはあったけれど、そこを歩いていたら黒い大きな鉄の扉が道を阻んでいた。
その扉の前に立つ警備員的な立場であろう騎士に、何も言われずに会釈をされながら開けて貰った時点で、なんか怪しいと思っていた。それでも口に出さずにユリウスのあとに続いてその扉をくぐると、今度は両脇にあった塀はなくなって、どこまで続いてるのってくらい長い道を歩き続けた。その歩いているときに、遠くにうっすら3本の塔の先が見えていた時点で嫌な予感はしてた。
だって、周りには建物と思えるものはそれくらいしか見えなかったから。
でもその塔の足元は木々で覆われていたから、もしかしたら塔の横に小さな家があるのかも、なんて思っていたのに。思惑はあっけなくはずれた。
まさか、私が勝手にシンクという安易な名前を付けたユリウスが。
無理に抱きしめて何度もキスをしてしまったユリウスが。
こんな大きなお城に住めるくらい偉い人だなんて思ってもみなかった。
ユリウスの格好からしてこのお城に仕えてる使用人、っていう線はなさそうだし。
ダリアに対する態度からも、あまり階級は下ではないような気がする。
それに黙っていてもこんなにオーラを持ってる人だ。
きっと王子付の第一騎士とか、騎士団長とか、そんな感じの偉い人に違いない。
「ね、ねぇ」
なんだか、今更ながらに私がこっちの裏の世界に来てしまったことに、不安を覚えてきた。
さっきの勢いはどこへ行ったとばかりに弱気な私の呼びかけにも、ユリウスは優しく「どうした?」と続く言葉をを促してくれる。