真紅の世界
その優しさに少しだけ勇気を貰って、私は胸の内の不安を口にした。
「私、この国の王様とか王子様に歓迎される存在かな? 私ってすっごく厄介な存在だと自分でも思うんだけど。私、この世界に……このお城にいていいの?」
ユリウスが、表の世界のアレンのような王子様のもとに私を連れて行くわけない。それは分かっているけれど。何分、私はこの世界のことをかじる程度にしか知らない上に、これと言った特技もない。
……いや、剣道は得意だけれど、それがなんの役に立つのって話だし。
何もできないのに、このお城にお世話になるってことは衣食住をタダで提供してもらうだけの、厄介な客なんじゃないだろうか。
……わたし、そこまでずうずうしくいられないんだけど。
「ここで使用人として雇ってもらうことって出来る!?」
考えに考えて出した私の提案は、「いや、使用人は今の人数で足りている」というユリウスの一言でにべにもなく却下されてしまった。
「大丈夫だ、王はお前を気に入ってる。 何もしなくても傍に……この世界に笑顔でいてくれれば、喜んでこの城においてくれるだろう」
続いた、根拠のないユリウスの言葉に首を傾げる。
「……王様って、私のことを知ってるの?」
当然の私の疑問に、ユリウスは意味深に笑みを浮かべるだけで答えてはくれない。
そして答えてくれないまま、背中に回された腕に力を込めて、私をお城の中へといざなった。