真紅の世界
「ちょっと待って、私入っても大丈夫なの?」と、慌てる私を物ともしないユリウスは、私の背中に手を添えたまま長く広い廊下を歩き続ける。
廊下にびっしり敷き詰められているのは、ユリウスの瞳によく似た真紅のカーペット。
毛が長いものなのだろうか、歩くたびにふかふかと少し沈む感触が、とても気持ちいい。
まるで迷路の様に先も見えないほど長い廊下。
あちこちに道が分かれているのに、ユリウスはこの城のすべての道を知り尽くしているかのように、迷いなく進んでいく。
まっすぐ行ったと思えば、右に曲がったり左に曲がったり。階段をのぼったと思ったら降りたりまたのぼったり。
最初のうちは、もし何かあったらすぐにお城から出れるように、と道を覚えていたんだけれど。途中からもう覚えるのを放棄した。覚えられるわけがない。
あまりにも道順が複雑すぎるのだ。
もしかして、ユリウスがわざとこんな道を選んでるんじゃないかと思ったくらいだ。
……目的の場所までの最短距離が、こんなに長いものなのだろうか。
もし何かがあって逃げることになったら、もう窓から飛び降りるしかないだろう。
ただひたすらにユリウスについて歩いて、流石に疲れを感じ始めた頃にやっと、ユリウスが「着いたぞ」と、この長いお散歩の終了を告げてくれた。
……長かった。
本当にここはお家の中なのかと何度も思ったくらいに、広すぎた。
レティのお城は、地下までの道やレティの部屋までの道を難なく覚えることが出来たのだから、このお城が規格外の大きさなんだろう。