真紅の世界
ユリウスが立っているのは、扉のない大きな部屋への入り口だった。
真紅の絨毯の上に敷かれている、真っ黒の敷物が部屋の奥へと敷かれている。その上を、ユリウスは私の手を握りながらためらいなく踏み進めて行く。
広い空間の奥。真っ黒の敷物のたどり着く先には、二段くらいの段差のある台座。その広い台座の上に、一つの豪華な椅子がポツンと置かれている。
部屋の中央にぶら下がるシャンデリアと、それを囲うようにぶら下がる小さな証明。それくらいしか装飾品のないこの部屋には、歩くユリウスと私、それから部屋の入り口の両脇に立っていた2人の甲冑を着た人、そして椅子の隣に立つにっこりと笑顔を浮かべた、黒い短髪の甲冑を着ている人だけしかいない。
もしかして、この短髪の人がこの国の王様……つまり魔王なんだろうか。
でもだとしたら椅子に座って待っているはずだ。
椅子の隣に立ってるということは、王様のつぎに偉い人なのかな。
ユリウスの影から見える、その静かな笑みを浮かべた人を恐る恐る見上げながらそんなことを考えていると、何故か目が合ってしまって慌てて視線を下げる。
「この方が?」
そう言った声はきっと短髪の人で、そしてその質問の先はユリウス。
ユリウスは答える前に、陰に隠れていた私を引っ張ってユリウスの前、つまり短髪の人の真正面に立たせた。
そして一言。
「そうだ、異論は認めない」
と、やけに偉そうに口にした。