真紅の世界


背の高いユリウス。
甘い言葉がよく似合うユリウス。

どこから見てもイケメン。
イケメンという言葉で表現するのが、陳腐とも思えるほどの美形なユリウス。

真紅の瞳に艶やかな真っ黒な髪。すらりと長い手足に、意外にもガッシリしている身体つき。つないだ手から微かに感じる剣だこ。
つまりユリウスは剣も嗜むということだろう。
美形なのに剣術も魔術も精通しているらしいユリウス。

欠点なんて言葉は、ユリウスの辞書にないようだ。


……なんて。ユリウスの容姿について考えて、今の言葉を理解することを逃避してみたけれど。真紅の瞳と、横にいる短髪の人の、隠しきれていない微かな笑い声がそれを許してくれない。
だから諦めて、さっきのユリウスの言葉をもう一度、胸の内で反芻してみる。



“我が国へようこそ”


と言った気がする。 というか確実に言った。


“我が”国?


って、そりゃこの国に住んでいる人はみんな、この国を自分の国だというに違いないけど。ここはお城の中で、そしてユリウスがさっき座っていたのは、なんだかとっても偉そうな椅子だ。

ってことはこの場合の“我が国”っていうのは、言葉通り“ユリウスの国”と解釈するのが正しいんじゃないだろうか。

その考えに至った瞬間、握りしめられた手がこわばってしまったのは無意識だった。

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