真紅の世界


ユリウスはアレンじゃない。

むしろアレンのところから救い出してくれた人だ。


頭では分かっているのに、ユリウスが“王様”だと思ったら身体が勝手に反応してしまった。


きっと手だけじゃなくて表情にも出てしまったのだろう。ユリウスは、何とも言えない悲しげな表情をして、それからふわりと包み込むような笑顔を浮かべた。


それは私を安心させるような、やわらかな笑顔。


細められた真紅の瞳は、アレンのお城にいたとき唯一の救いだったシンクのものと一緒で、こわばった身体から徐々に力が抜けていく。


「大丈夫だサラ、俺はお前に言ったはずだ」


優しくてそれでいて強い声音にハッとする。


“俺はサラを傷つけないし、サラにたくさん幸せが来るようにしてやる”


そう言ってくれたのは、他でもない目の前にいるユリウスだ。


“王はお前を気に入ってる。 何もしなくても傍に……この世界に笑顔でいてくれれば喜んでこの城においてくれるだろう”


そう言ってくれたのはユリウスで、ユリウスはたぶんきっと、その王様なのだ。

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