惑溺
 






「……飲まないって言ったくせに、よくこんなに飲んだな」





ガラスのテーブルの上に並んだ様々な形のグラスを眺めて、リョウは呆れたように笑った。


そんなこと言ったって、勝手にカクテルを作ったのはリョウでしょう?
せっかく作ってもらった物を残すなんて悪いもん。
しょうがないじゃない。


そう反論しようと思ったけれど、酔いのまわった私はなんだか口を開くのも面倒で、ソファーに横たわったままリョウの顔を見上げていた。

ソファーの肘かけに軽く腰掛けたリョウが、気だるげに寝転がる私を見下ろす。
こうやって下から見上げると、いつもは前髪で隠れている長い睫毛と黒い瞳がよく見える。
改めて思うけど、この人本当に綺麗な顔をしてるな。
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