惑溺
色っぽい唇、顎から綺麗な喉仏へのライン。
鎖骨から肩へ続く男らしいシルエット。
長く綺麗な指。
こんな綺麗な顔に、整ったスタイルに、色っぽい声。
これでバーテンダーなんてしていたら、すごくモテるんだろうなぁ……。
下から彼を観察しながら、ぼんやりとそんな事を考えていると、
冷たく鋭い切れ長の瞳が、少し緩んで小さく笑った。
「俺の事を拒絶してるんだか、誘ってるんだか、よくわかんない奴だな」
長い指で寝転がる私の髪を一筋すくい上げ、手の中で弄びながら私を見下ろす彼に
誘ってなんかいない。思いっきり拒絶してるよ。
口を開くのが億劫で、そう目で訴えながらソファーの上で小さく寝返りを打った。
ごろりと寝返りを打って視界に入ったのは、テーブルの上に残されたたくさんのグラス。
それぞれのグラスの底に少しずつ残った色とりどりのカクテルが、室内の照明を反射してとても綺麗……。
お酒のせいか体がフワフワとして気持ちがよくてなんだか夢を見ている様な気分だった。