惑溺
リョウは意地悪な表情で、とろりとやわらかいプリンを銀色のスプーンですくい、横になったままの私の口元へと運んだ。
仕方なく開いた口の中に、冷たくて濃厚なバニラの味が広がる。
「自分で食えよ、酔っ払い」
と、文句を言いながらもリョウは次のひと口を私の口へと運ぶ。
素直に口を開きプリンを飲み込む私を見て、面白がるように唇を歪めて笑った。
その表情がやけに色っぽくて目が離せなくなる。
「ねぇ、リョウはキス魔なの?」
「……は?」
私の突然の質問にリョウは軽く眉を上げ、微かに首を傾げて私を見下ろす。
その少し首を傾けた表情が、昨日キスされた時みたいだな、なんてぼんやりと思った。
「だって、昨日いきなり私にキスしたから……」
「キス魔じゃないよ。どっちかと言えばキスは好きじゃない」
ぽたり。
スプーンの上の甘いプリンを私の口に滴らせながらリョウは小さく笑った。