惑溺
キスが好きじゃない?
「じゃあ、どうして私にキスなんかしたの?」
ああ、酔っぱらってる。
血液に混じるアルコールのせいか、体が火照って頭がぼんやりする……。
「別に?からかってやりたかっただけ」
「サイテー……」
私が力なく呟くとリョウは楽しそうにクスクス笑った。
からかいたかったからって、いきなりキスするかな、普通。
こいつ、本当に性格悪い……。
そう思いながらも、不思議と一緒にいるのがイヤじゃなかった。
こうやって何も考えず怠惰な時間を過ごせるこの部屋は、日常を忘れてしまいそうなほど居心地がよかった。
ぽたり
またひと雫、スプーンからプリンが滴って私の唇を汚した。
甘いプリンが頬を伝う。