惑溺
 
キスが好きじゃない?


「じゃあ、どうして私にキスなんかしたの?」

ああ、酔っぱらってる。
血液に混じるアルコールのせいか、体が火照って頭がぼんやりする……。

「別に?からかってやりたかっただけ」

「サイテー……」

私が力なく呟くとリョウは楽しそうにクスクス笑った。

からかいたかったからって、いきなりキスするかな、普通。
こいつ、本当に性格悪い……。


そう思いながらも、不思議と一緒にいるのがイヤじゃなかった。

こうやって何も考えず怠惰な時間を過ごせるこの部屋は、日常を忘れてしまいそうなほど居心地がよかった。



ぽたり


またひと雫、スプーンからプリンが滴って私の唇を汚した。
甘いプリンが頬を伝う。
< 105 / 507 >

この作品をシェア

pagetop