惑溺
「ん……もう。普通に食べさせてよ」
寝転んだまま睨む私に、リョウは
「生意気」
と、冷たく笑う。
ソファーの上に足を投げ出しだらしなく横になる私を見下ろしながら、手を伸ばしその長い指で私の顔にかかる髪を耳にかける。
……あ、キスされる
ぼんやりとした頭でそう思った。
まるで映画でも見ている様な客観的な思いでリョウの事を見つめていた。
「……酔っ払い。なんて顔で人の事見てんだよ」
まるで流れる時間まで凝縮されてしまった様な怠惰で濃密な時間。
リョウが呆れたように小さく笑いながら
そっと目を伏せた。