惑溺
 


すうっ、と黒い影が視界を覆う。
私に降り注ぐ黒い髪から、微かに苦い煙草の香り。

そして、私の口の中の甘いバニラの余韻を乱暴に拭い去るような

強引なキス。



「甘……」

唇を離したリョウが、濡れた私の唇を指でなぞりながらそう呟いた。





「リョウ……?」

「何?」

私を面白がる様に見下ろしながらゆっくりと唇をなぞるリョウに



激しく、欲情した。





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