惑溺
「……リョウ、お酒になにか入れた……?」
その問いかけの意味が分からないという様に、彼が軽く眉をひそめて私を見下ろした。
「は?」
「だって……」
だって、私おかしいよ。
キスを拒むどころか、もっとして欲しいと思うなんて。
もっとキスをして
もっと私に触れて
もっと、もっと……
そんな欲求が私の中に生まれ暴れ回る。
自分から男の人に抱かれたいと思うなんて生まれて初めてで。
まるで私の中で、今までの自分ではない何かが目を醒ましたかのようだった。