惑溺
 



ベッドの上で激しく繋がり合いながら、必死になってリョウの背中にしがみついて爪を立てた感触が、生々しく指先に甦る。
彼の背中に残された、いく筋もの細い爪跡がその激しさを物語る。


確かにこの胸に抱かれたんだ。


その逃れようのない事実に、私の胸を襲ったのは後悔でも罪悪感でもなかった。




ただ、
自分の事が怖かった。





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