惑溺
 



私は何やってるんだろう……。





恋人も親友も裏切って、なんでここにいるんだろう。

もう、リョウとは関わらないほうがいいって
彼に近づいたって、いい事なんてひとつもないってわかっているのに。

理性とは違う、抗えない別の何かに私の思考を乗っ取られてしまったように
こうやってまたこの部屋に来てしまう自分。


ただ、彼が何を考えてるのか知りたくて来ただけだ。
それだけ問いただしたらすぐに帰ればいい。

心の中で言い訳じみた事を思って見たけれど、罪悪感はまったく薄れなかった。




誰もいない静まり返ったリョウの部屋で、黒い革のソファーに座り膝を抱いて大きくため息をついた。


本当に、私は馬鹿だ……。

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