惑溺
2
なんの変哲もない1DKのアパート。
お世辞にも広いとは言えない私の部屋の中に、聞きなれた携帯電話の着信音が響く。
ベッドの中で寝ていた私は、半分寝ぼけたまま布団の中を探り、ようやく探し出した携帯を耳に当てた。
「ん……、もしもし」
『もしもし由佳?まだ寝てたのか』
電話から聞こえて来たのは私の彼氏、聡史の声。
「んー…、今何時?」
ぼんやりしながら部屋の中を見回すと、カーテンの隙間から射す陽の光で、もうすっかり朝は過ぎている事がわかった。
私は頭を押さえながらベッドから体を起こし、カーテンをめくり窓の外をのぞく。
ああ、寝すぎたかも。
眩しい太陽の光で、ずきんと目の奥が痛くなる。