惑溺
 
「からかわないで。年下のくせに……」

絞り出すようにそう言いながら、掴まれた手を振りほどこうとしたけれど、力で勝てるはずもない。
私の精一杯の抵抗を顔色一つ変えずに受け止めて、むしろ楽しむような表情で、リョウは私の指先に口づけたまま見下ろした。


「……ふーん。
俺が高校生だって最初からわかってたら、この部屋になんて来なかった?
彼氏の教え子だって知ってたら、俺になんて
……抱かれなかった?」

低く囁く声に、体が熱くなった。
きっとリョウに捕えられた指先も、動揺が伝わってしまうほど熱くなっているに違いない。
指先に触れていた唇が私を試すようににやりと笑い、私の薬指の先を軽く噛んだ。


「……あ、当たり前でしょ?
最初から知っていたらこんな事なんて……」

取り繕う様にそう言ったけれど、私の体の熱は勝手に上昇するばかりで。
指先に舌を這わせるリョウが、そんな私を見下ろして楽しげに喉をならした。

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