惑溺
当たり前でしょう?
最初からリョウが高校生だって知っていたら
聡史の教え子だって知っていたら
ここになんて来なかった。
安易にお酒を飲んだりなんか、
理性を無くすほど酔っぱらったりなんか、
この腕に、抱かれたりなんか……
震える声でそう呟いてみたけれど、私の心の中はそんな事少しも考えていなかった。
私の薬指に感じる彼の唇の感触。
その柔らかく熱い感触に、あの夜の事が甦って私の理性を乗っ取ろうとする。
お酒に酔ってよく覚えていないはずなのに、
私の身体の上を這う、彼の唇の感触が生々しく甦った。
「じゃあ、試してみようか?」
まるで悪魔の様に魅惑的な微笑みで、酷い男が甘く囁いた。
「ちゃんと俺の事を拒めるか、試してみようか」