惑溺
 
身動きの取れない私を見下ろして、ふ、と甘い吐息を吐いてリョウが微かに笑った。
ゆっくりと身を屈め、その顔を傾ける。
サラリと彼の黒い綺麗な髪が乱れ、前髪が瞳にかかる。

その乱れた前髪からのぞく冷たい瞳が、ぞくぞくするほど艶やかで、私は息をのんだ。


「ちゃんと拒んでみろよ」

そう言いながら、私を試すように弄ぶように、もどかしいくらいゆっくりと近づいてくる唇。

「やめ……っ」

やめて。

触れる寸前でなんとかそう絞り出した私の言葉は、強引にリョウの唇の中に吸い込まれた。

微かな隙間からねじ込まれた熱い舌。
乱暴に、全ての言葉を奪い去るように何度も角度を変え絡ませる。

「んん……っ」

酸素を奪われ溺れていくように、意識がぼやけていく……


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