惑溺
「……それ、本気で嫌がってるつもり?」
綺麗な口角をわざと歪めるようにして微笑む。
そこから吐き出される冷たい言葉。
「本気で嫌なら、もっと必死になって拒めよ。
そんなんじゃ、俺を誘ってるようにしか見えねぇ」
耳元で目眩がするほど色っぽい声が艶やかに響く。
低く喉を鳴らして酷い男が嘲笑った。
「……ッ!
誘ってなんか……!」
「誘ってなんか、いない?」
リョウは笑いながら、ゆっくりと私の耳たぶに舌を這わせた。
直接鼓膜を響かせるその声と、肌の上を這う熱く湿った感触。
「……嫌がってるようには、見えないけど?」
足掻けば足掻くほど、どんどん深く溺れていくみたいだ。
もう逃れようもない。