惑溺
あれ、私携帯どこにおいたっけ……?
目を閉じたまま、いつも携帯電話を置いてあるはずのベッドサイドのテーブルに手を伸ばしてみたけれど、携帯電話どころかそのテーブルの感触もなかった。
ぼやけた頭で薄眼を開けて音の鳴る方へと手を伸ばす。
床の上に散らばった服の中から手探りで携帯を探し出した。
「……もしもし?」
寝ぼけたままで誰からの着信かも気にせずに、とりあえず通話ボタンを押すと
『由佳?まだ寝てたんだ』
そこから聞こえてきたのは聡史の声。
明らかに寝起きの私の声に、呆れたように笑いながら私の名前を呼ぶ優しい声。