惑溺

ベッドの上で身動きの取れない私を見下ろすリョウが、携帯を持つ方とは反対の耳元で、電話の向こうの聡史には聞こえないくらいの低い声で囁く。

「ベッドの上で他の男からの電話に出るって、いい度胸してるな」

吐息だけで笑うようなその声に、思わず首を左右に振った。

違う。わざと出たんじゃなくて。
寝ぼけていただけで……

そう弁解しようにも、私の口はリョウの手に塞がれたままで。
それにこの電話が聡史へとつながったままでそんな事を言えるはずもない。

ただ涙目で彼を見上げる私を見て、覆いかぶさる男が意地悪にニヤリと笑った。

「俺を嫉妬させようとでもしてんの?」

「ん……ッ」

鼓膜を振るわす低く冷たい声と、耳の孔を這う熱い舌。
それに理性を奪われて、声を出して泣きたくなった。

嫉妬なんかしないくせに。
私が誰とどこで電話をしようと、あなたはそうやって少しも動揺することなく面白がって笑っていられるくせに。

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