惑溺
あーあ、着替えもせずに寝ちゃってたんだ。
ベッドから起き上がり自分の恰好を見下ろすと、昨日着ていた服のまま、思いきりシワだらけになっていた。
『ふーん。由佳が自分から飲むなんて珍しいな』
確かに。
いつもなら周りに付き合って、最初の乾杯の時だけ飲むくらいで後はウーロン茶ですませていたのに。
昨日はバーテンダーが目の前で作ってくれるカクテルが綺麗で美味しくて、ついついいつも以上に飲んじゃったんだよな……。
『……で?博美ちゃんは何て言ってた?』
笑いながらそう訪ねてきた聡史に、私は首を傾げた。
「え?何の事?」
『どうせ博美ちゃんに「いきなり彼氏にプロポーズされた、どうしよう!?」って相談でもしてたんだろ』
思いっきり見抜かれてる……!
笑いながら私の思考をすんなりと言い当てた聡史に、驚いてすっかり目が覚めた。