惑溺
ぷつり、と警告音が止まると同時に電話が切れた。
画面が真っ黒になり電源が落ちた携帯電話をちらりと見て、リョウが小さく笑った。
「浮気中は電源切っとけよ」
私の胸元、丁度心臓の上あたりに噛みつくように歯を立てながら、手を伸ばし沈黙した携帯電話を指ではじく。
さっきまで聡史と繋がっていたその小さな機械は、シーツの上を滑り落ち、乾いた音をたてて床へと落ちて視界から消えた。
私は、なにやってるんだろう。
なにやってるんだろう。本当に。