惑溺
リョウはカップに入った温かいコーヒーをふたつ持ってきてガラスのローテーブルに置くと、ため息と一緒にソファーに深く沈むように座った。
「……そうだったんだ」
だから、まだ高校生なのにバーテンダーなんてして、ひとり暮らしをしているんだ……。
リョウの孤独な少年時代を思って胸が痛んだ。
なんて声をかけていいのかわからないまま立ちつくす私を見て、リョウはふ、と息を吐いて笑った。
「なんてね。こんなベタな話、信じるんだ?」
「え……?」
「女ってほんと同情するのが好きだよな。
この手の話をしたら大抵の女は可哀想とか言って簡単に寄ってくる」