惑溺
「う、嘘なの!?」
信じられない。
よりによってこんな作り話をするなんて悪趣味にもほどがある。
一瞬でも可哀想と思った自分が馬鹿みたい!
「……さぁね。
今の話が嘘かどうか、先生に聞いてみれば?」
ソファーに深く座りながら私を見上げてニヤリと笑うその顔は、さっきまで過去を語っていた表情とはまるで別人で、簡単に振り回される私の様子を心底面白がるような冷たい微笑だった。
……馬鹿にしてる!
目の前で平然とコーヒーを飲むリョウに本気で腹がたつ。
人の事を振り回して面白がって馬鹿にして!!
何より簡単に彼の思い通りになってしまう自分が一番悔しい。
私は乱暴に自分のバッグを掴むと、リョウの顔もみないまま足早に玄関へと向かった。