惑溺
 
「次はいつ来る?」

「え……?」

リョウの問いかけに思わず振り向いて顔を見上げると、まるで猫でもあやすように長い綺麗な指が優しく私の頬をなでた。

「ここの部屋の鍵、持ってていいから」

それは、どういう意味?
私はまたこの部屋に来ていいの?
そんな事言われたら、勘違いしそうになる……。

リョウは軽く首を傾けて、戸惑う私の顔を見下ろしてゆっくりと微笑んだ。

「真面目で優しい加藤先生じゃ物足りなくなったら、また来いよ」

綺麗な顔で微笑みかけながら吐き出される皮肉な言葉に、私は簡単に傷つく。
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