惑溺
「松田さん、足どうしたの?」
職場でいつものように事務処理をしていると、通りかかった木本さんにそう声をかけられた。
「え?」
足、どうかしたっけ。
木本さんの言葉にパソコンを打つ手を止め、自分の足元に視線を落とす。
制服のスカートから出た、ベージュのストッキングを履いた足に、室内履き用に使っている黒いシンプルなパンプス。
別にいつもと変わらないんだけど……。
そう不思議に思いながら首を傾げていると
「ほら、そこ。ひざの内側赤くなってる」
と木本さんは私の足を指さしながら言った。