惑溺
「え?どこですか?」
「ほら、そのへん。内腿」
ひざの内側?内腿?
不思議に思いながら木本さんの指さしたところを見ると、確かに右ひざの少し上、内腿のあたりが赤くなっていた。
「…………ッ!!」
その小さな赤い痣に、私は慌ててきつく膝を閉じ両手で太もものあたりを隠した。
一気に体温が上昇する。
冷や汗のような物が一筋背中を伝った。
「あ、あのこれは……」
そう弁解しようとした時
「えー、木本さんやらしい!
セクハラですよ今のは」
向かいのデスクに座る同僚の沙織が笑いながら話しに入って来た。