惑溺
「セクハラってなんだよ。
俺ただ松田さんの足赤くなってるって教えてあげただけなのに」
「セクハラですよ。
会社の女の子の内腿を凝視するなんてギリギリ変態ですよ」
「凝視してないって。
たださっき足を組み替えた時目についただけだっつの」
木本さんと沙織が冗談まじりに話している間に、私は深呼吸をくりかえす。
右の内腿。
やわらかい肌の上に残った赤い痣。
気付かなかった。いつの間に。
制服のスカートのすそをぎゅっと握って、その後ろめたい赤を隠すように引っ張った。