惑溺

私の前まで来て足を止めた彼女が、軽く顔を傾けて見下ろすように小さく笑った。

「……あんた、リョウの今の彼女?」

『今の』と言う所を強調するように、わざとゆっくり言いながら私を睨む女の子。

綺麗な子……。

栗色の巻き髪。大きな瞳を縁取る長い睫毛。キラキラの爪に体のラインを強調した華やかなワンピース。
まるで蝶の様な艶やかな女の子。

丁寧にしたその可愛らしいメイクとは似つかわしくない険しい表情で、リョウの部屋の鍵を持つ私を睨んでいた。

「なんだ。普通のOLさん?」

彼女は私の事を足元から髪の毛まで値踏みするように眺め、鼻で笑った。
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