惑溺
「リョウみたいなタイプの男、あんたには似合わないよ」
……確かに。
私なんかよりも、この子ほうがずっとリョウとお似合いかもしれない。
人を惹きつける華のある外見に、どこか影のある雰囲気の瞳。
彼女のその危うさは、リョウの持つ冷たさと似ていた。
黙り込んだまま返事をしない私に、彼女は苛立ちを隠さずに小さくため息をついた。
「やめときなよ。
リョウははあんたみたいなタイプの女が珍しくて手を出しただけだよ。
どうせすぐ飽きられるんだから、さっさと別れたら?」
「…………」
そう言いながら、カツンとヒールの音を響かせて一歩私に近づいた。
ふわり、と漂う甘い香り。
この香り、どこかで……。
そう思った瞬間思い出したのは、小さな紙に書かれた可愛らしい文字と、その文字とは正反対の激しい叫びのような言葉。