惑溺
 
リョウは大きく息をつき、うんざりしたように低い声で言う。

「お前が出てったんだろ?もう俺の顔なんて見たくないって」

「……なんで、そんなに冷たいの?
どうして追いかけて引き止めてくれないの?
リョウはあたしなんて、いてもいなくてもどうでもいいの!?」

泣き叫ぶその悲痛な声に、私まで苦しくなった。

「別に?
俺の側にいたければいればいいし、俺が嫌になったんなら出てけばいい。
わざわざ女を追いかけるなんて面倒な事するつもりはない」

必死にすがりつく女の子を突き放す様な冷たいその言葉。
傷ついたのは彼女だけじゃない。
私の心も握り潰された様に痛んだ。
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