惑溺
その残酷な言葉に、足元で小さく蹲った女の子の体が大きく震えた。
「そう言えば満足か?」
リョウは白い華奢な背中に向かって冷たく吐き捨てた。
薄暗いマンションの灰色の廊下の上に広がる女の子の艶やかなワンピースが妙に印象的で、羽を広げた蝶のみたいだな、なんて思った。
床に蹲ったままの女の子を無視して、リョウがドアの鍵を開けて部屋に入ろうとした時
「リョウ。あんた、どっかおかしいよ……」
女の子が絞り出すように小さく呟いた。
「リョウ、あんたどっか壊れてるよ。
人の事、本気で好きになれないんでしょ?
馬鹿なのは自分じゃん。かわいそ……」