惑溺
「あの子は、あんなにリョウの事を愛してたのに……。
リョウはただ都合のいい女としか思ってなかったの……?」
本当に恋愛感情もなにもなく、利用していただけだったの?
いてもいなくてもどうでもいい。
リョウにとっては女なんて、その程度のものでしかないの?
リョウの冷たい目で見つめられるのが怖くて、玄関の扉の前で立ち尽くし、自分のブーツのつま先を見ながら震える声でそう言った。
玄関の天井にあるフロアライトが作る自分の影。
その影に大きな影が重なった。
私の顔の横にリョウの腕が伸びる。
リョウは私を閉じ込める様に、後ろにある玄関の扉に両手をつきもたれ掛る。
うつむいた私の耳元で、感情を圧し殺した様な冷たい声が響いた。
「……愛してるとか、誰が決めんの?」