惑溺
「口に出して愛を語れば満足なわけ?
尽くして貢いで、うんざりするくらい束縛すれば、
それで、愛してるって事になんの?」
怖い。
本気でリョウを怖いと思った。
私の鼓膜を震わす低い声。
無感情なその声に、私を見下ろす冷たい目。
そこからゆっくりと滲むように伝わるリョウの静かな怒りが怖くて仕方ない。
その時、私のバッグから低い振動音が響いてきた。
何の音なのか、すぐにわかる独特のバイブレーション。
思わずびくりと私が体を震わすと、リョウはくすりと笑いながら、私のバッグに手を入れた。
「……ッ!」
リョウがバッグから取り出したのは、小さく震える携帯電話。
長い指が折りたたまれた携帯電話を開き、そこに表示された名前を私に見えるように目の前で揺らした。