惑溺
「……もう、来ない」
足元に転がる銀色の鍵を見ながら、掠れた声で呟いた。
「もう、二度と会わない」
その言葉に、リョウはゆっくりと私から体を離し
「あっそ」
と、興味を無くしたように呟いた。
私は目を伏せて、リョウの綺麗な指とその手の中にある私の茶色のシュシュを見ながら、ゆっくりと背後のドアを開けた。
リョウが今どんな顔で私の事を見ているのか知るのが怖くて
うつむいたまま逃げる様に部屋を出た。